【評価段階】
★★★★★──読まねばならない。
★★★★───読んだ方がよい。
★★★────参考程度に。
★★─────暇なら読めば?
★──────見なかった振りで通り過ぎよ。

【F】
Leon Festinger
L.フェスティンガー+H.W.リーケン+S.シャクター『予言がはずれるとき この世の破滅を予知した現代のある集団を解明する』★★★(20100219)
Leon Festinger,Henry W.Ricken and Stanley Schachter
“WHEN PROHECY FAILS
An account of modern group that predicted the destruction of the world,1956”

水野博介訳 勁草書房1995
大洪水にもならず、
救出のためのUFOも来ない……。
そのとき、教団はどうなったか。
〈認知的不協和の理論〉を検証する社会心理学の古典、堂々の完訳。
 教団の主要人物が行なった予言が外れることによって(予言とは常にそうなる運命にある訳だが)、教団の布教活動がかえって活発になり、信者も増大するという、一般的な予想からは大きく外れた「現実」が如何にして生じるのか。その説明に挑戦した古典的論考。とは言え、教団のフィールドワークに基づくいわゆる「民族誌」が大半を占め(それはそれで実に興味深いのだが)、肝心の説明モデルの提示には物足りなさを覚える。それは勿論、モデルそのものは後の『認知的不協和の理論』において展開されることになるのであり、本書はその契機を提供するものであったという理由にある。
 従ってむしろ注目すべきは、1956年アメリカの社会において、現代日本の新宗教教団(や、組織化されていず、巷間に流布するオカルト的世界観)に見られるような宇宙観に関する多様なガジェット――空飛ぶ円盤、人類の終焉、それに伴う救済、宇宙人の援助、転生等々――が既に大部分揃っている、という点にある。つまり今日のオカルト的世界観、及びそれを核とする教団の原型はこのあたりにある、という事実、それこそがむしろ新鮮な驚きであるのだ。
Michel Foucault
ミシェル・フーコー『フーコー・コレクション3 言説・表象』★★★★★(20100905)
Michel Foucault“Dits et Ecrits,1994”

小林康夫・石田英敬・松浦寿輝編 ちくま学芸文庫2006
『言葉と物』への大きな反響を受け、フーコーは「言表」「言説編成体」など理論の中核となる諸概念を精緻化させていく。ディスクール分析を通し、「考古学(アルケオロジー)」の方法論もさらに緻密なものへと研ぎ澄まされるコレクション第3巻「言説・表象」は、『言葉と物』の第一章・第二章となる「侍女たち」「世界の散文」や英語版への「序文」をはじめ、記号の戯れを読みとく傑作「これはパイプではない」、鮮やかなドゥルーズ論「劇場としての哲学」などを収録する。 解説 松浦寿輝
 何よりも「侍女たち」と「これはパイプではない」に尽きる。どちらも絵画に対する「読み」であり、そしてそれがそのまま一つの「論」になっている。フーコーの絵画論がセットで読める素晴らしい書。絵画批評とは「描かれた対象」を議論することではないし、そして「描いた作者」を語ることでもないというごく当たり前のことが、少なくとも我々の社会では未だに理解されていない。この二つを禁じ手にするとなると、おそらくは大半の絵画批評が言葉を無くすはずである。では人は絵画を前にして何を言葉にすればよいのか? そもそも絵画を「言葉で説明する」とはいかなる営みなのか? その優れた実例がここにある。ベラスケスを取り上げた「侍女たち」では「如何に描かれているのか」が語られ、そしてマグリットを語る「これはパイプではない」では言葉と絵との関係(もしくは無関係)が語られる。思い出さねばならないのは、言葉を手に入れることによって人は――そして人だけが――否定を認識できるようになった、ということである。
Sigmund Freud
フロイト『精神分析入門(上)/(下)』★★★★★(20100913)
Sigmund Freud“Vorlesungen zur Einführung in die Psychoanalyse,1917”
“Neue Folge der Vorlesungen,1933”

高橋義孝・下坂孝三訳 新潮文庫1977
精神病の命名と分類に終始していた伝統的精神医学に対し、自由連想の採用という画期的方法によって症状の隠された意味を探る精神分析を創始して、二十世紀文学にも多大な影響を与えたフロイト。本書は、1915年から17年までウィーン大学で一般向けに行われた講義の記録であり、明快な論旨の進め方、啓蒙を目的とした対話的手法で書かれた最適の入門書である。(上巻)
本書は、人間の心理には無意識の抑圧と抵抗という複雑なメカニズムが存在し、ノイローゼの原因にはリビドーが深く関係していると唱えて、精神現象の解明に偉大な貢献をしたフロイト理論を理解するための絶好の手引きである。講義録である「倒錯行為」「夢」「神経症総論」の三部に続いて、修正補足を目的に書かれた「精神分析入門(続)」を併せて収録する。(下巻)
 言わずと知れたフロイト晩期の講義録。従ってフロイトの他の論文に比べて、(今となっては)余計な生物学的知見及びその検討が少なく、その文読みやすい。今日的な意義は別として、精神分析がいかなるものか、を知るフロイト自身の著作としては最適であるだろう。ただし決して「論旨明快」とは言えないどころか、もってまわった言い回し、見え透いたほのめかし、気を持たせる言い方など、フロイト独特の粘着的な文体自身は実に鬱陶しい。なお、フロイトの理論は機械論的なメタファーに溢れていること、そしてこの理論と、いわゆる「トラウマ」に代表されるような“俗流”心理学は決して同一平面上にはないことを踏まえておかねばならない。

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