【評価段階】
★★★★★──傑作。
★★★★───秀作。
★★★────凡作。
★★─────駄作。
★──────困作。

【Q】
Ellery Queen
エラリー・クイーン『ローマ帽子の謎』★★★(20111031)
Ellery Queen“The Roman Hat Mystery,1929”

中村有希訳・創元推理文庫2011
評判の新作劇〈ピストル騒動〉がかかるローマ劇場の客席で、弁護士のフィールド氏が毒殺された。上演中の大胆不敵な犯行は手がかりが少なくとりわけ捜査陣の頭を悩ませたのは、現場から被害者のシルクハットが忽然と消えていたことである――この雲をつかむような難事件に、ニューヨーク市警察きっての腕ききリチャード・クイーン警視と、その息子で推理小説作家のエラリー・クイーン氏が挑戦する! 本書は本格ミステリの偉大なる巨匠クイーンのデビュー作にして、“読者への挑戦状”の趣向も愉しい〈国名シリーズ〉の栄えある第一作である。
 以前の井上勇訳は1960年の出版でもあり、文章が古臭く、かつ意味が通りづらいところも多々あったのだが、新訳ではそれが綺麗になくなっている。とは言え、原作自身はさらに古い時代に書かれたものであり、当時のアメリカの風俗事情などに通じていなければリアリティはもはや感じられない。トリックそのものも意外に単純で、今日の視点からすれば単に歴史的な価値しかない、という評価か。
エラリー・クイーン『Yの悲劇』★★★★(20151016)
Ellery Queen“The Tragedy of Y,1932”

大久保康雄訳・新潮文庫1958
 ニューヨークの富豪ハッター氏の腐爛死体が海から引きあげられ、毒薬による自殺と判定された矢先に、ハッター夫人エミリが何者かにマンドリンで殴殺されるという事件が起きた。悪名高きハッター家を次々と襲う不気味な死の影……サム警部の依頼で出動した名探偵ドルリー・レーンの顔も今度ばかりは憂えがち。クイーン得意の論理の技巧が極致に達した一大犯罪絵図。
 当初はエラリー・クイーンという名義ではなく、バーナビー・ロスというペンネームで発表された、『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』『レーン最後の事件』と続くシリーズの第二作。探偵もエラリー・クイーンではなく、ドルリー・レーンという舞台役者である。四部作のうち、謎解きとしては本書がシリーズ中では最も劇的だろう。そして二階堂黎人のあの作品との併読で、面白さは倍増するかもしれない。なお、創元推理文庫版の鮎川信夫訳はどうも入り込みにくかったことを付記しておく。



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