【評価段階】
★★★★★──傑作。
★★★★───秀作。
★★★────凡作。
★★─────駄作。
★──────困作。

【A】
Gilbert Adair
ギルバート・アデア『閉じた本』★★★(20091231)
Gilbert Adair"A Closed Book,1999"

創元推理文庫2009
事故で眼球を失った大作家ポールは、世間と隔絶した生活を送っていた。ある日彼は自伝執筆のため、口述筆記の助手として青年ジョンを雇い入れる。執筆は順調に進むが、ささいなきっかけからポールは恐怖を覚え始める。ジョンの言葉を通して知る世界の姿は、果たして真実なのか? 何かがおかしい……。彼の正体は? そしてやって来る驚愕の結末。会話と独白のみの異色ミステリ。
 物語を前にして、読者は「会話文」というエクリチュールをパロール「として」理解する。そうした読者の物語に対する作法を逆手に取ったミステリー。物語の視点は結末部分を除いて盲目の作家に固定されているため、地の文が存在せず、会話文と独白のみで進行するだけに実に読みやすい。登場人物も非常に少なく、すっきりと整理されている。このような設定は実に斬新であり、言わば盲点を衝く設定である。残念なのは、出来事が最終的には外界における整合性において決着することであろう。世間と隔絶した盲目の作家ならば、他者の言葉は常に「信じるか信じないか」というレベルで把握されるはずであり、一人の他者が残した言葉の整合性において「奇妙さ」を作り出して欲しかったところである。また、余りにもひねりのない仕掛けによって物語が収束する点も残念である。
Kevin J. Anderson
ケヴィン・J・アンダースン&ダグ・ビースン『無限アセンブラ』★★★★(20110321)
Kevin J. Anderson and Doug Beason"Assenblers of Infinity,1993"

内田昌之訳・ハヤカワ文庫1995
月の裏側で発見された謎の建造物の調査に赴いた一行が、現地でことごとく無残な死を遂げた! それは異星から来た無数の微少なロボット――ナノマシンの仕業だった。あらゆる物質を原子レベルで解体してしまうこの機械が、もし地球に侵入したら? ただちに最高の頭脳を持つ科学者が月に招集され、厳重に隔離された研究所で必死の調査を開始するが……人類が直面した新たな脅威を迫真の筆致で描く、戦慄のSFサスペンス
 読後の第一印象としては、解説でも言及されているグレッグ・ベア『ブラッド・ミュージック』を思い出す。あるいは諸星大二郎の「生物都市」に類似した描写も存在する。またはホーガン『ミクロ・パーク』。いわゆるファースト・コンタクトものに分類できる内容ではあるが、かなりの変化球でもある。結末はいささか肩すかしな感は否めないが、それでも読み応えはあるだろう。
Isaac Asimov
アイザック・アシモフ『ロボットの時代』★★★★(20130308)
Isaac Asimov“The Rest of the Robots,1964”

小尾芙佐訳・ハヤカワ文庫1984
月世界開発用に調整されたロボットが、地球上で行方不明となって始まるてんやわんやの大騒動――「AL76号失踪す」ほか、地球から派遣されたロボットと木星人との奇妙な邂逅を描く「思わざる勝利」人間以上に美男子な召使いロボットと女主人との間に芽生えた恋の顛末「お気に召すことうけあい」そして、おなじみスーザン・キャルヴィン博士が〈ロボット法三原則〉を用いて大活躍する「危険」「校正」など、中短篇8篇を収録! ロボット・テーマの第一人者であるアシモフがユーモラスに綴る愛すべきロボットと人間の物語、名作『われはロボット』の姉妹短篇集ついに登場!
 原題どおり、アシモフの手になるロボットSFの拾遺集。前作『われはロボット』に比較すれば、テーマがバラエティに富んでいて一貫したところがないとは言えるが、一方で多様な物語を楽しめる作品集でもある。特に、最後の一文でオチを付けるアシモフ独特のユーモアが冴える「AL76号失踪す」が絶品。

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